『オープニングナイト』と『ミュンヘン』とイスラエル。

春の気配が漂いはじめた頃から、
時間が空くと映画を観ている。


といっても、TSUTAYAで旧作まとめて借りておいて
それを夜中の寝る前に消化するという感じの
亀の歩みな鑑賞だけど。


そん中で、しみじみ感じたことが、
『ウォンテッド』を観ながら…


テレビ買わなきゃ!!


後頭部ステゴザウルスなアナログテレビのブラウン管では
いっこも迫力ない。


『ウォンテッド』は迫力がないと
観てるのも辛い幼稚なストーリーだし、
せめてアンジーに震えたいと思うも、
画面の奥のアンジェリーナ・ジョリーは「…ちっこ!」。



という前時代的我が家のテレビでも
十分にひぃ、ふぇーとなったのが、
『オープニングナイト』と『ミュンヘン』だった。



ジョン・カサヴェテスが
監督も主演男優も務める『オープニングナイト』は、
当時のカサヴェテス嫁のジーナ・ローランズが主役。
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ジーナ、か、か、かっけー。
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※上の画像は「いつまでも脇役でいてくれよ」というサイトからお借りしました。


こっちの方が有名という
グロリア』を近々観ようと思ってるんだけど、
ジョン・カサヴェテス素敵っす。
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これは、ブログがご縁のプリンス大石が
薦めてくれはった作品で、
あたしの周りの女子(老いも若きも、いや、特に老い方向)に
薦めたい名作でありました(鼻息)。


舞台女優のジーナ・ローランズが老いや孤独や
向き合うべき人生の諸々に揺られている過程を
観ているだけで同じように不安になるように丁寧に、
そして哀しく震わせていくんだけど、
いやほんま、およよ。


あの人と、あの人と、あんな人にも観て欲しい。









もいっこは『ミュンヘン』。
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スピルバーグの監督作品で、
アメリカ映画主義のミッチーに薦められたんだけど、
面白かった。


イスラエル、パレスチナ、レジスタンス、復員後の苦悩。


あたしはフランス人のルイとルイのパパが
一番興味深い登場人物で、
またも夜と霧のバルビイ裁判を思い出したりした。


フランスのレジスタンスが、なぜモサドのテロリストに協力するのか。
いや、モサドではなく個人アフナーという(建前)に協力するのか。
ここだけでも、もう一作できるほどの奥行きがあるんだけど、
それもちゃんと見えてきて、唸る。


嗚呼、あたしの浅い見え方ではなくて、
宗教学者で映画マニアの釈徹宗先生なら
どんな風に切り取るのかすごくお話を聞きたい…。


いっとき、フランスレジスタンス関連や
パレスチナやイスラエル関連の本を
ちょこっと読んだりしたはずなのに、
『ミュンヘン』ではところどころ「?」な場面も多く、
あたしにはそれらが意味する必然性がくみ取れなかった。


そんな訳で、
『ミュンヘン』の原作とされる
ジョージ・ジョナスによるノンフィクション小説
「標的は11人 モサド暗殺チームの記録」を読んでいる。
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映画では見えなかった背景が
奥深く広がりまくっていた。


これが、むちゃくちゃ面白すぎる。
いや、こんな興奮するというか震える本は久しぶりかも。


つまり、あああたしは何も知らんかったんや、
と打ちひしがれること多々という訳なのだが。


例えば、
主人公のアフナー(映画ではアヴナー)がなぜ
ミッションを引き受けたのか。
どういう気持ちで「仕事」に向き合っていたのか。


そこには、イスラエルという国の事情がある。


といっても、パレスチナや世界に向かう事情ではなく、
ユダヤ人同士の事情。


イスラエルというユダヤ人の国には、
たくさんの種類のイスラエル人がいる。

以下、ジョージ・ジョナス著「標的は11人 モサド暗殺チームの記録」より抜粋
(めちゃ長いけどすいません)
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 キブツ(農業共同体)は質実剛健、勤労奉仕、自己犠牲を信条とする。ことに、農作業を通じて土地との神秘的な結びつきが重視されるのである。いまでこそキブツの出身者はイスラエル国家を政治的にも社会的にも支えるエリート集団だが、西ヨーロッパで大都会の空気を吸ってきた当時のアフナーにとっては、むしろ矯正施設か何かに入れられるような気がして面白くなかった。初めて母との間に、そう簡単には埋められない亀裂が生じた。
 アフナーは四年間キブツで過ごしたが、そこで学んだことが二つあった。一つは同じイスラエル人でも、まるで異なるイスラエル人がいるという現実を初めて知った。キブツの主流は東ヨーロッパ系ユダヤ人の「ガリシア人」が占めていた。ガリシアとはポーランド南東部からウクライナ北西部にかけての地域で、排他性、自堕落、うぬぼれ、狡猾、うそつきを特性とする下層ユダヤ人の居住地だった。ガリシア人は反面、機敏で活力にあふれ、意志が強いことで知られる。しかもすばらしいユーモア感覚を持ち、勇敢で祖国に献身的である。が、常につけ入る隙に目を光らせているから油断がならない。概して洗練されたものには関心がなく、平然とうそをつくし、信念よりも物質に重きを置く。おまけに地縁、血縁を軸とした派閥意識がきわめて強く、何かというとすぐに手を結びたがり、互いにかばい合う。ことごとくがガリシアの出身者ではないだろうが、しかしこれらの特性を持ち合わせていさえすれば、まず「ガリシア人」といってよかった。
 ガリシア人からすれば、アフナーのような西ヨーロッパ系ユダヤ人は「イッケー出(ボッツ)」であった。イッケーとは、都会のユダヤ人街「ゲットー」や東欧のユダヤ人村「シュテトル」を経験したことがない、西欧社会に吸収された「同化ユダヤ人」のことである。
 (中略)
 アフナーはキブツ生活を通じて“ガリシア流”なるものを思い知らされた。東ヨーロッパ系ユダヤ人、とくにポーランド系ユダヤ人、ロシア系ユダヤ人なら徹底的に面倒をみる流儀であった。最高の働き口、世に出る絶好のチャンスはすべて彼らの手に渡るように仕組まれる。
 (中略)
 アフナーはキブツばかりでなく、軍隊を経て社会人になっても、ガリシア人の優位がついてまわるのを知った。ドイツ系、オランダ系、アメリカ系ユダヤ人などの出る幕がないほどであった。オリエント系ユダヤ人にいたっては、ガリシア人の助けを借りないかぎり手も足も出なかった。

============================


アフナーは、イスラエルへという故郷への愛国というよりは
こうしたイスラエル社会に対して、アフナーは
<ガリシア人のペースに乗って競争し、
ガリシア人に打ち勝とうと決心した(本文より)>。
そして、このことが、
アフナーの秘密諜報活動の背景にはあるのだという。


このくだりはかなり衝撃的で、
このことを知ると、『ミュンヘン』という映画は
思っていたものを全く違う物語に感じられた。


というか、
このことが最も映画のコアにあるようにも思えた。


イスラエルという国は、
つまりひとつの理想国家のはずなのに
そこには、最も人間のどろどろとした背景が
国家の軸にある。


というよりか、
イスラエルという特殊な成り立ちの国だからこそ
そこに凝縮されているようにも感じる。



このあたりは、大前提という感じで書かれていて
「標的は11人 モサド暗殺チームの記録」はもちろん
映画『ミュンヘン』のように進んでいくんだけど、
やっぱり原作の方が面白い。



嗚呼、宗教学者で何でも知ってる釈徹宗先生なら
どんな風にこの本を解釈するのかすごくお話を聞きたい…。



あたしは映画も大好きだし、
映画でしか表現できないことも多いのはもちろんだけど、
こういう原作を読むと、うーんと唸らされる。
でも、映画観たから読んだわけで。


しかし、この原作を
あんな映画にするスピルバーグはやっぱりすごいな。


という間抜けにもほどがある感想で、
失礼いたします(あたふた)。














この記事へのコメント

マダ松
2009年04月12日 10:29
☆愛しの青山さーんっ。

1ヶ月遅れで我が庭の桜も、ちょっと恥ずかしそうに咲きはじめたうららかな日曜の朝、いかがお過ごしでいらっしゃいますかっ(こんなしょうもないことかいてたらまた字数制限にひっかかるやーん)。いやもう、ジーナファンのわたくし黙っておられず出てきましたあああ。グロリアはひーっけんでござります。あんなかっちょええ女に憧れます。オトコマエと言う言葉はあの映画の中のジーナにこそ相応しいっ。そういう意味では青山さんもほんまにべっぴんでオトコマエなんですけどね(はあと)。しかし、「ミュンヘン」以後の文章には打ちのめされてしまいました。ああ、同じ映画を観ても、そこまで映画の世界を読み解き、その後原作本まで読んでしまう、青山さんの知的好奇心・・・素晴らしすぎまする。わたしはもう何年も前に見て、ごっつい作品やけど、ねむたーとなりました(ひぃー恥)。も一回観てみます(およよ~)。向田作品も見逃して残念至極ですが、今日は朝からいろいろお勉強させてもらいましたっ。
TOSHI
2009年04月13日 15:18
「ミュンヘン」は未見の映画ですので私もトアロードのTSUTAYAへ走ろうかと思います。ただ、今気になる映画は「僕らのミライへ逆回転」でして、町山智浩さんのコラムで知ったものの、あっちゅうまに劇場から去ってしまった作品なのです。それが準新作の棚の下の方で見つけた時は嬉しかったなぁ。
あと、ちょっと前に自分の中で「ベトナム」ブームが来て、人がボロボロと死んで行く「ハンバーガーヒル」を見たくなったのですが、これがまた最近の韓流コーナーの拡大でどこぞに追いやられたのか全然見つからず、最終的にヤフオクで購入するハメになってしまいました。
MASAKURO1231
2009年04月15日 03:07
うん,同感、ジーナ、か、か、かっけーでした。
aya
2009年04月16日 09:36
シャロン・ストーンでグロリアリメイクされたときは、そ、それはちゃうやろ!!と哀しく思ったジーナ・ラヴ女であります。でもって、ジーナがええな~というオトコが好きかも、でも見透かされそうで怖いかも。Opning nightは未見であります。連休の密やかな楽しみにしよっと。
あおやま
2009年04月18日 09:13
マダ松さま、オープニングナイト観ながら、松澤さんが客席にいるような錯覚さえ覚えておりましたです(笑)。ほんで、「ジーナ今日どないしたん?なんかしんどいん?できることあったら言うてねー」とか楽屋でジーナに言ってる姿まで(妄想)。
いやはや、なぜか風景がかぶるそんなお二人が素敵でありますー。
あおやま
2009年04月18日 09:16
TOSHIさん、ハンバーガーヒル、懐かしいです。あおやまもmプラトーン以降、片っ端からベトナム映画観ました。たしか、高校の頃?ですかね(昔すぎてわかりません…)。TSUTAYAの韓流ブームほんとすごいですよね。映画監督別とかなくなったの、すごく辛いです。あ、でも、最近は検索の機械が登場しました。でも、探す作品、片っ端から在庫なしに泣いてます。およよ。
あおやま
2009年04月18日 09:18
MASAKUROさま、上記の理由でTSUTAYAになく、グロリアはアマゾンで注文しました!めちゃ楽しみです。LAコンフィデンシャルは烏の親分から教えてもろたでありますっ。映画も追っかけしております(笑)。
あおやま
2009年04月18日 09:20
ayaさんもオープニングナイトの客席にきっとおられたはずー(笑)。隣には松澤さんがいてはって。

ぜひ、感想聞きたいです。めちゃたのしみー。絶対観て欲しいですっっ(脅迫)。

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